シナリオライターになりたい人のためのブログ。

あんこといんことうんこの境目が知りたい。

好きと得意は違う。書けば書くほどしんどい、なんてこともある。

好きなことを仕事にしよう!

そして、ゲームが好きで、お話を書くのが好きで

ゲームシナリオライターの道を選んだのなら

この仕事でずっと食べられるよう続けていって欲しい。

 

 

…が、好きと得意は違う。

好きだからと目指してなんとかお仕事もらえるようになったのに

書けば書くほど辛い

なんてことが起きたりします。

 

私もシナリオライターになってから、とにかくいろんな経験が積みたくて

ゲーム以外にドラマCDの脚本や舞台の脚本や、マンガ原作なんかの

お仕事の依頼があるとすぐに飛びついてたんですが

舞台観るのも、マンガ読むのも大好きなのに、

(ドラマCDは聞いてる間何していいか分からないから

あんまり自ら聞いたりはしないですが、嫌いではないです)

いざその仕事をしたらしんどいことがありました。

 

ユーザーとしてコンテンツを楽しむ「好き」は

クリエイターとして作品をつくる「好き」と

イコールではないということですね。

 

つまり、クリエイターとしてつくるのが「得意」ではあっても

それを「好きだ!」と心から楽しめないときがしんどいんです。

 

例えば私が、お仕事の依頼を受けたとき

以下のような感じで下準備を始めます。

 

例)ファンタジーRPG系の世界観設定、シナリオの依頼が来た場合。

 

・依頼に近い作品をプレイして分析

(コンシューマー、アプリ問わず。

企画を立てるときに必ず目標にしていたり参考にしている作品があるので

それを担当さんから聞いておく)

・中世ヨーロッパという時代指定があれば

その頃を舞台にした小説、マンガを読む。アニメ、映画を見る。

・歴史を調べ、その当時の文化を学ぶ

・ファンタジーなら北欧神話ネタがよく使われるので

北欧神話についても調べておく

・ディレクターさんの好きなマンガやアニメがあれば聞いて

好みの傾向を探る。

(最終的に作品のクオリティを管理する人の好みは大事!

プロレスが好き、とか任侠映画が好き、とかおよそ

依頼の世界観とはかけ離れていても

どういうキャラがどう動くか、とかの

好きな展開が割り出せたりします。

あと、その話題で盛り上がって仲良くなっておくと

すごく仕事がしやすくなりますw)

 

…等。

日本が舞台の平安時代、戦国、江戸、とかなら

そこに絞ってまた資料やら参考作品集めて

下地づくりします。

 

新しいことを知ることに快感を覚えるので、

仕事を機に、色々と調べるのが楽しくて

この作業は「好き」なんですよね。

 

 

さあ、じゃあこれらの知識を元に

情報を再構成して新しい物語をつくるとき。

そうなると「得意」が表に立ちます。

創作するのは「好き」なんですよ。

だけど、じゃあなんでここで好きが来ないかというと…。

 

商業作品として、仕事の依頼を受けているから、です。

 

商業作品である以上は、好きなものは好きだ、

という情熱だけではやっていけません。

ある程度、売れるという採算を見込んでつくらなければいけないんです。

当たり前ですが。

 

自分はここで話をストン、と終わらせたい。

そういう展開が好きだ!

しかし、アプリの運営を考えるなら、ここは濁して

次の話もつくれる余白をつくっておかないと…!!

 

とかの考えも必要になってきます。

ここら辺は、他の売れている作品を参考に、

どんな売り方で稼いでるのかの研究をして

話の中に盛り込まないといけません。

 

そこも含んで物語をつくるのが、プロのシナリオライターです。

納品するシナリオは商品なので。

 

で、「好き」と「得意」の違いは何か、というと。

好きはもう、無条件で好き。

そのことを考えると、ワクワクして止まらないもの。

 

得意は、後から身に着けた能力。

勉強して学んで、必要だからと覚えて場面によって使うことのできる

知識や特技。

 

 

マンガ原作の依頼で、今、読者に受けていて売れているのは

エロ系なので、エロ系で原作考えてください。

という依頼が来ると、エロいの好きだけど、微エロが好きであって

ガッツリエロはちょっと違うんだよな…。

ドラマCDで、女性主人公をターゲットにした18禁のシナリオの依頼があって

でも私はBLが好きで、男性主人公じゃないと…しかもその受けは

マッチョ系おじさんじゃないと。とか。

(※あくまで例であって私のことじゃないですw)

 

シナリオライターを目指した以上、話のつくりかた、

シナリオの書き方は勉強しているからなんとか書けるんだけど、

自分の好みとは違うから、テンションが! モチベーションが上がらない…!

てことあります。

いくらプロだとはいっても、人間なので好みはあります。

 

女性向けの恋愛アプリだと複数の攻略対象キャラがいますが

お金持ちオレ様系キャラを書かせたらものすごく上手なのに、

ミステリアスドS系キャラを書いてもらったら、日本語すら怪しい…!

くらい、クオリティにバラつきのあるライターさんは結構います。

 

シナリオを書くというのは技術で、

後から勉強して身に着ける「得意」なことです。

書きたい! という情熱で時間も忘れて書き続けられる「好き」が

そこに伴ってると最強なんですが、

いかんせん、仕事だと「好き」が伴わない依頼も来ます。

 

そんなとき、納品したもののクオリティが低く、

最終的に発注側が別なライターさんに依頼して全部書き直してもらう

なんてこともあります。

(※ここで発注側に見極める能力がないと、

「これじゃない、もっとよくして」という曖昧な指示による

リテイク無間地獄が発生します)

このとき、最初に書いたライターさんの名前を表に出してると

後から書き直した人はゴーストライターとなって

実績として出せなくなるなどの悲劇が起きます。

 

書いてる間、本人も苦しくて、苦しみの連鎖が発生すると

もうほんとみんな辛いだけですよね。

こうならないようにするためには、自分が「好き」だと思うものを

きちんと把握しておくことが大事だと思います。

 

眼鏡をかけたドSキャラが好きで、そういうキャラを書くのが好き! とか。

たいてい、自分が好きなものをきちんと把握しておけば、

それ以外は「苦手」なものになるので、

依頼が来た時にこれは好きか、好きじゃないかと判断できるようになります。

 

仕事だから、生活かかってるから仕事選べない!

…なんて現実的な理由から、

自分に依頼してくれたのに、断ったら次がないかも!

自分を選んでくれて嬉しいから引き受けたい!

…なんて感情的な理由から、

 

「好き」ではない仕事を受け、「得意」でなんとか切り抜ける。

ということを繰り返していると、後々、息苦しいことが待ってたりします。

「得意」は自分をある程度の高みに連れて行ってくれますが

そこから先の、解放された世界に行くには「好き」が重要です。

 

ライターになって続けたとして

3年目とか5年目あたりで、

「あれ、私この仕事好きだったはずなのに…」

なんて悩みが生まれたとき。

この「好き」と「得意」について考えてみてください。

好きを優先して、仕事を選ぶ。

これがその壁をぶち破る鍵になるかもしれません。